のんべんだらりん。

ぼっちランデヴー

高速道路のSA・PAでうんこをすることが私の夢です。

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 風に煽られ流る走流。トラックの隙間にちらつく街灯が眩しい。

 

 基山PAに漸く着いた。雲影が白んでいる。ストロベリームーンとかいうのが28日に見えるらしいとPAでご飯を食べていたら小耳に挟んだ。500円の安い定食を食べ終えた後、煙草を咥えて空を眺める。ここいらで雨の一つくらい降ってくれると面白いツーリングになるだろうと思っていた。雨に絆されるのも悪くない。靴が濡れてぐしゃぐしゃになったり、シールドが曇って前が見えなかったり、濡れた白線に乗り上げ、グリップを失ったりすることを考えるだけで胸が躍る、なんて考えていたら浮雲の隙間から白い穴がが現れた。昼頃降っていた雨も既に乾いている。つまらないから空に中指を立てた。歯型の付いた煙草のフィルターは少し湿っていた。

 

 6月の頭に壇之浦PAに行った時のこと。あの時、門司側から下関に向かっても直接PAに行くことが出来ないことを忘れていた。でも、単車で一人、深夜の関門橋を渡った時の感動はきっと忘れない。あの感動がずっと続けばいいのにと、バイクに跨ってスマホをいじりながら思った。私以外の二輪が一台もいないことを少し誇らしく思いながら、高速道路案内図を眺めた。まだPAを出発する気は起らなかった。

 

 Cymbalsでも聴こうか、それとも今日のような天候ならフラカンのほうがいいだろうか。ポケットを弄ったが、イヤホンを持ってきていなかった。仕方ない。旅に忘れ物はつきものだ。フロントカウルに潰された虫の数を数えた。そろそろ出発しよう。明日も一限から講義だ。

 

 鳥栖で降りる。スマホナビは性に合わない。案内標識だけで充分。しかし、芸が無いので3号線を走ることになった。まぁいいや。帰ったら寝る。眠たい。

 

 下手なhighwayより3号線は速い。右車線を弾丸のように走る黒塗りの高級車にぶつかったらどうなるのだろうとか、車線を変更すればいいのに後ろから煽ってくるヘッドライトやたら眩しいファミリーカーはきっと暇なんだろうなとか下らない事ばかり考えていた。ふと案内標識に太宰府の文字が見えた。行くしかねぇ。

 

 石畳と曇り空は意外にもいい雰囲気を醸すということがわかった。五月蠅いからエンジンを切り、手で押して鳥居の足元に停めた。ちょっとお邪魔する。こんな時間に子供が走り回っている。俺に単位を下さいお願いしますなんでもしますからと手を合わせ、橋の上で鯉を探しながらリンゴジュースを飲んだ。このまま朝が来なければいいのに。

 

 3号線に戻り、ふらふら走っていると油山近くを通るとわかったので、人生2度目の油山に向かった。ビビった。祭りかよ。こんな狭い駐車場にライダーが沢山屯している。4輪もたくさんいた。一人で訪ねるには息苦しかったので夜景を拝んでその場を去った。もう行くことは無い気がしている。

 

 二見ヶ浦夫婦岩前の駐車場に停める。ここに来たのは今日3度目。一体何が面白くてここに来てしまうのかよくわかっていない。族車乗りが隣でバイク談義をしていた。その横で柵に寄りかかり上を見る。晴れやがった面白くない。つまらないので帰ることにした。

 

エンジンがチリチリ音を鳴らしている。スイングアームとマフラーは泥だらけ。タンデムステップにまで泥が跳ねてやがる。汚れたバイクは格好がいい。

 

疲れた。課題あるけど寝よう。明日の俺がきっとなんとかする。

リアタイアを蹴飛ばし、お疲れ、と小さく声をかけた。

 

明日は一日中雨の予報らしい。